Science

【mixi日記2005年12月05日】 水生のサル

サブタイトル:国立づいてます

先週の水曜、国立地球屋でスプラッシュコンチネンタルオーケストラのライブを見に行ったんだけど、リクエストで「水生のサル」という歌が出た。
不思議な歌だけど、みんな好きらしい。

"人は昔猿の頃、海の中で暮らしてた"という歌詞の元になった仮説を、ファンの一人として紹介しちゃいましょう。
余計なお世話かもしれないけど。

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「ミッシング・リンク」という言葉がある。
類人猿と現代人の祖先の間には、進化的な断絶があって、両者の中間を繋ぐような生物の化石が、未だに発見されていない。

今から500万年前、ヒトが猿から分かれた重要な時代の、決定的な化石が無いというのは、考えてみれば不気味な話。

そんな中、オックスフォードの動物学者、A.ハーディ教授が1960年に「水生人類説(アクア説)」という突飛な学説を披露した。
人類の直接の祖先となった猿は、水辺で生活していたというのである。
後に、エレイン・モーガンという女性ジャーナリストが「人は海辺で進化した」という本を出版、この学説は一躍有名になった

この学説の根拠は以下の通り:

・現在の人間は直立2足歩行をしている・・・チンパンジーやゴリラも歩行のときは4つ足メインだけど、人間だけは2足歩行。海中の貝や魚、海草を取っていたのなら、自然に後ろ足だけで立つ個体が生き残る⇒二足歩行に進化。

・皮下脂肪がある・・・陸上哺乳類の全ては、人間のような皮下脂肪ではなく、体内に多くの脂肪を蓄える。人間のように厚い皮下脂肪を持っているのは、ジュゴン、アザラシ、イルカやクジラといった海生哺乳類だ

・体毛が無い・・・水中を泳ぐのであれば、体毛は少ない方が有利。猿のような体毛は海中で生活するうえで不利なので、徐々になくなったのだろう。また、人間の体は猿に比べると流線型の形をしている。

・心肺機能・・・猿と比べ、人間は非常に長く水中に留まることが出来る。そういった心肺機能が発達している。
友人の娘さんは海の中で産まれたらしい。
水中出産した赤ん坊は、すぐに泳ぐことが出来る。

・手指の水かき

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モチロン、まだ仮説の段階で、信じてる学者さんは少数派らしいけど、僕はとても面白い話だと思っている。

生命は海から生まれたけど、「人間」という種もまた海から生まれたのかな。

ファーマコゲノミクスとは?


今日はちょっと自分の専門領域の話。

食事に伴う消化や排泄といった代謝活動、受精や発生、思考や睡眠、或いは死ぬこと。こうした生き物一般に見られる活動の諸相を総じて「生命活動」と呼ぶ。いのち、だ。

現在の生命科学では、旧来の宗教的世界観に見られる、いわゆる魂の存在論にはあえて踏み込まず、蛋白質や核酸を初めとした分子間の相互作用によってこの生命活動を説明している。そうすることにより、きわめて明快に、そして詳細に、生命活動を物理や化学の言葉で語ることができるからだ。
そしてそれは、生命活動をより人間意志の思うがままに操作する技術・・・医学や薬学・・・の驚くべき向上をもたらした。生命活動が分子間の相互作用に過ぎないのなら、化学的な作用によって生命活動に影響を与えることができるのは道理である。

ワトソン/クリックのDNA発見から半世紀をへて、医学/薬学の世界は分子生物やコンピュータ科学の力を借り、新たな領域に突入したといっていい。その代表的なフロンティアとして、再生医療/人工臓器と並ぶ注目株がファーマコゲノミクス(Pharmacogenomics)だ。

普段、スピリチュアリティなどに興味を持っている人も、以下のことはぜひ知っておいて貰いたい。

私達の肉体は細胞によってできている。細胞の中心には「核」と呼ばれる薄い小さな穴の開いた膜によって囲まれた部位があり、この中には「染色体」と呼ばれるものがある。染色体はDNAが幾種類かの蛋白質に巻きつけられた形で存在している。DNAは細長い形状をしている分子の鎖だ。その鎖の一部に意味を持った分子の配列を持ったものがある。その配列を端から読むと、それが一つの蛋白質の設計図であることが分かる。これが遺伝子(ゲノム)だ。遺伝子はとある特殊な蛋白質によってコードを読み取られ、ちょうどプリンタから設計図を出力するように、RNAという物質に転写される。RNAは小さな物質なので、核に開いた穴を通って細胞の中に出ることができる。そこで「大工」の役割をする蛋白質の複合機械によって、RNAに描かれた設計図は読み取られ、蛋白質が作られる。遺伝子情報を仲立ちとして、蛋白質でできた機械が機械を再生産するメカニズム。これが分子生物学が説明するところの「生命」だ。
「セントラルドグマ」なんていう仰々しい名前までついている。

今世紀初めのヒトゲノム計画成功により、ヒト遺伝子は約2万個あることが分かった。いうなれば、僕達は2万種類の蛋白質ナノマシーンの集合体だ。

ファーマコゲノミクス(Pharmacogenomics)とは、遺伝子情報を用いて薬に対する生体の様々な反応を解析・評価する研究領域だ。「薬理ゲノム学」とも訳されている。

特徴①テーラーメイド医療が可能になる
蛋白質の設計図=遺伝子は、世代が経るに従って子から孫へとどんどん伝達=レプリカされた。その際、僅かずつノイズが生じてくる。これが甚だしくなると突然変異の原因になって進化の引き金になったりもするんだろうけど(ここら辺イイカゲン)、もうちょいミクロな視点で見ても、特に男女の間で生殖したりなんかする僕達高等動物は、著しい個体差を持つに至っている。
メラニン色素を生産する蛋白質の僅かな差異が肌の色を決める。
光を受容するレセプター蛋白の、ほんの一つのコードの読み違えが色盲をもたらす。

遺伝子による僅かな個体差(SNPともいう)は当然、疾患に対する薬の効き方にも作用する。同じ薬を用いても、治る人、治らない人、副作用で苦しんでしまう人がいる。
こうした各人の差異を遺伝子レベルで解析し、その人にもっとも合った処方を行う(テーラーメイド医療)がもうすぐ可能になる。

特徴②創薬の工程が大きく変化する
従来の製薬会社が行ってきた、薬の発明の仕方は・適当に当たりをつけて化合物を合成⇒動物に投与して効果を見る⇒安全性試験⇒臨床 といった流れだったが、今後は遺伝子の病気をもたらす特定の部位をターゲットにして、効率的な創薬が可能になる。動物実験の数も大きく減らせる。
こちらはもういくつか成功例がある。


で、僕はここで何を言いたかったのかというと、別に科学の進歩を賛美したいわけではなく、僕達が普段崇高な意味で用いている生命という言葉が、今は完全にテクノロジーの領域に入ってしまっているということだ。

もうすぐ、生命を自由に操ることのできるテクノロジーが間違いなく誕生する。最後のフロンティアに思われた生命が意のままになった時、僕達にに残された謎は僕達自身、つまり「意識」の領域だけとなる。

そして、僕達に与えられた価値観とはこのようなことだ。
僕達が将来、生命をも「自分の意思のままに」する力を持つのなら、ではその「意思」とは何か、どのような「意思」をもつのか、これが焦点になる。
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